2008年1月16日水曜日

狂気と恐怖



NHKで放映されている『プロフェッショナル・仕事の流儀』という番組がある。
各界の現役のプロに焦点を当てたドキュメンタリー番組で、
著名でない人が取り上げられる事が多い。
昨日の放送では、珍しく歌舞伎役者・坂東玉三郎が取り上げられていた。

幼少の頃に小児麻痺を患い、リハビリのために習った舞踊で才能が開花、
女形としては不向きな長身を克服するため血の滲む努力をし、
デビュー以来連日12時間以上の舞台。
ハードスケジュールから若い頃に鬱病を患ったが、
今でも仕事に対する真摯な姿勢は全く変わらない。

公演中は、舞台が終わるとどこにも立ち寄らずに帰宅し、
トレーナーに念入りに体をほぐして貰う。声の調子を保つため電話すら控える。
生来の病弱な体から、いつ舞台に立てなくなるか分からない。
そのために、遠い目標を立てるのではなく常に明日の仕事に常に全力を傾けるのだという。

その頑なな仕事への姿勢に狂気と恐怖を感じた。
金を払って見に来る客に対して最大限の努力を払ったものを見せる。
それだけではない原動力があるように感じた。
いつか舞えなくなる日が来ることに対しての恐怖、
その日が来ても悔いを残さないようにするが為の、過剰なまでの努力。
そんなものが透けて見えるような気がした。


『信濃路紅葉鬼揃』という公演で、美しい女性に化けた鬼が、
最後に鬼の姿に戻り見得を切る場面は、悪寒すら感じる迫力だった。

0 件のコメント: